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グルーミングという言葉をご存知ですか?
グルーミングは、子どもへの性犯罪において、近年よく使用される言葉です。
子どもの頃に受けた性被害は、生涯に渡って心に深い傷を負わせるものです。
子どもの従順な心を操り、性被害へと誘導するグルーミングの卑劣な手口を対処法を含め解説しています。
2023年4月19日更新 / 執筆者 / 吉田 麻衣子
男女間トラブルをメインに活動して10年以上のキャリアの持ち主。自身でも婚活サイトを運営しているほどの世話好き。監修者ページ
グルーミングとは本来は英語のgroom「手入れする」「仕込む」が語源となっています。
一般的には犬のお手入れとしてグルーミングという用語が使われていますが人間同士で起こるグルーミングは性的欲求を満たす目的で子どもに接近し、信頼や好意を利用して子どもを手なずける行為とされています。
グルーミングのきっかけの多くは、ネット上からの接触だと言われています。
SNSやオンラインゲームを通じて子どもに接触し、理解ある信用できる大人を演じて距離を縮めていくことです。
危惧すべきは、子どもの側にいる親までもが、グルーミングの意図を有する大人を「面倒見の良い人」と勘違いして積極的に受け入れてしまうケースです。
現段階ではグルーミング行為だけなら、子どもの興味を引き接触することなので犯罪には該当しません。
問題視されるのは、その先の目的が子どもへの性的接触や性的搾取がある可能性が高いことです。
グルーミング行為はさまざまな方法で子どもに近づき信頼関係を作りながら接触する手口が主流です。
ネット以外でもグルーミングを試みる大人はいますが、彼らもまた、ネットを駆使して子どもの好きそうな情報を仕入れ共感を示し信頼を得るのが常套手段です。
加害者たちは用意周到かつ計画的に子どもの心に入り込んできます。
子どもの気持ちに寄り添い、良い相談相手になるだけなら非難は一切不要ですが、彼らの最終目的はあくまでも子どもに性的接触をすることです。
気持ちに寄り添ってくれていると思って信頼していた大人から性被害を受ける子どもの心境を考えると、グルーミング行為は絶対に許されない行為です。
ネット世界では不特定多数の人間との繋がりが無限にあります。
これだけインターネット社会になった現在、小学生でも簡単にアカウントを開設することができます。
それに付け込み、歪んだ欲望を剝き出しに子どもを物色する大人が混在してもおかしくありません。
SNSで悩みを打ち明けたところ、親身になって相談にのってくれる男性を、すっかり信用してしまった女児。
会おうよと言われて、公園で待ち合わせ、言われるがままに車に乗ってしまいました。体の色んなところを触られて嫌でしたが断れなかったそうです。泣いて帰宅したところ母親に聞かれ、事情を話したとのことです。
ネットを通じて、同年代の女の子と好きなアニメのキャラクターの話で盛り上がり仲良くなった女児。
お互いの画像を送り合い、交流を深めるうちに突然、相手から裸の画像が送られてきました。
「私も送ったんだからあなたも送って!!」と強く言われ送るしかありませんでした。後に発覚した相手は男子大学生でした。
中学1年生だった少女は生徒に熱心で優しい塾の男性講師を慕っていました。講師は少女に補講してあげるよと自分の家に呼びました。
性的なことに無知だった彼女は、講師の部屋で二人きりになっても疑いもしませんでした。突然キスされ「好きだよ」と言われ戸惑うばかりでした。
「好きなら普通のこと」とほとんど強引に性交渉させられたそうです。
日本性科学情報センターの調査報告書によると、日本では女子の3人に1人、男子は10人に1人が18歳までに、何らかの性被害を受けていることが明らかになっています。
この被害件数には加害者が肉親のケースも含まれます。一見すると恐るべき数値ですが、これはあくまで氷山の一角だと言われています。
グルーミング行為は、子どもの孤独や承認欲求につけ込む形で行なわれます。
子どもたちが、大人達の歪んだ性的欲求の餌食になってしまう原因としては、次のようなことが考えられます。
子どもは従順で、性的行為に対して抵抗しにくい存在であるからと考えられます、
また、大人が性的な目で子どもを見る原因としては、子どもを性の対象にしたサービスや性犯罪を誘発するような情報社会そのものも一因と考えられます。
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性被害による癒えない傷には、傷を負った方の数だけのさまざまな苦難が潜んでいるといいます。
共通して絶対的に言えるのは、性被害に遭った子どものほとんどが生涯に渡り、そのショックを忘れられないことです。
トラウマ(心的外傷)という言葉のとおり、何年何十年経っても日常のどこかでフラッシュバックを起こす可能性が高いと言います。
性被害によるPTSD生涯有病率は約50%だと言われ、自殺率も被害を受けていない人より圧倒的に多いという報告があります。
その後の生活に大きな影響を及ぼす事例として以下に挙げています。
被害に遭った当初はまだ幼かったのにもかかわらず、数年後に性被害を受けたことを実感し、防げなかった自分を責め続け苦しんでいる人がいます。
実際、子どもたちには「防ぎようがない」のが性被害です。
海外では、わいせつ目的で子どもに連絡を取り、目的実現に向けた働きかけを行うと処罰対象にする国も出てきています。
その一方で、グルーミングはあくまでも子どもを手なずける手口であるものの必ずしもその先にわいせつ目的あると断定しづらい部分があります。
日本では性犯罪の規定について、「グルーミング罪」という新たな処罰規定をつくる議論が進められてはいますが、現段階では子どもと大人の問題とならない交流まで処罰されてしまうのはどうかとの見方が強いのが現実です。
一番の予防策はグルーミングに巻き込まれないよう普段から注意することですが、それは子どもには容易ではありません。
犯人は>周到、かつ計画的に子どもたちに近づいて来るからです。
性被害に遭わないよう変な大人に気をつけろと言っても、防げるものならとっくに防げているはずです。
優しそうな大人の裏の顔を見抜くことは大人でも難しいものです。
性被害の入り口になり得るグルーミングこそ予防することが重要なのです。
そのためにできることとしては子供の年齢にもよりますが、性被害についてある程度の知識をつけておくことが大切です。
身近に優しいお兄さん的な存在が現れても、密室に2人きりになるようなことは絶対に避けること。
自分のプライベートゾーン(水着などで隠している部分)は他人に触らせてはいけないということ。
以上の2つのことについては、分かりやすく諭してあげれば幼児であっても理解できるはずです。
子どもをグルーミングや性犯罪から守るため、普段から子どもとコミュニケーションとり、子どもの様子をよく観察することが大切です。
その中で、子どもの身体に何らかの外傷がないか、表情や行動において違和感や変化が見られたり、性的な話題へ敏感に反応するなどの症状があれば、注意は必要です。
もしグルーミングにすでに巻き込まれていたとしても、何としても性被害を抑止させましょう。
子どもが何か隠している場合は、子どもに大切に思うからこそ心配していると伝え相談に乗ってあげてください。
親に大切されていると実感できる子どもとは、自分のことも大切にするものです。
相談に乗ったうえで必要に応じて、第三者である行政の窓口や実態調査の専門家の助けを得ることもご検討ください。
子どもがグルーミングに巻き込まれている場合、家族で話し合い無事解決すれば何よりですが、すでに性被害に遭っている、または子どもに被害の自覚がない場合、一刻も早く専門窓口に相談されることをお勧めいたします。
我が子が性被害に遭うかもしれないという危機感を感じたときは、詳しい話を聞いたうえで相応しい対処法を決めましょう。
日本では16歳未満に対しわいせつ目的で面会を要求すれば1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金を科されます。
しかし子どもをグルーミングするような大人のほとんどは事の重大さを分かっていません。軽い気持ちや遊び心で子どもに手を出すのです。
相手がグルーミング行為を止めない、正体を明かさないなら、調査会社によって個人を特定してもらうことも可能です。その実態を暴くことで防げる性被害があるのです。
13歳以上への性的暴行は、「暴行や脅迫」があったことや「被害者が抵抗したこと」が立証できなければ、加害者を罪に問うことはできません。
グルーミング行為の中には、それまで信頼していた大人だったケースが多く、性被害を訴えることが難しく、立証することが難しいことは確かです。
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