インバウンド(訪日外国人観光客)が好調な日本ですが、今年2月から香港の観光客が減少しています。
香港の人が日本への渡航を控えている背景にあるのは、「7月に日本で大災害が起きる」という予言です。
この予言を信じた人々によって訪日香港客が減り、日本各地と香港間の定期便の減便まで実行されています。
科学的根拠のない予言から広まったうわさは、人々の行動を制限し、経済活動にまで影響を及ぼしています。
うわさは私たちの生活に身近なものですが、集団心理によって思わぬ被害に発展する危険性もあります。
この記事では、うわさに惑わされる人々の心理と、うわさが引き起こす風評被害について、探偵目線で解説します。
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いま、国内各地と香港を結ぶ定期便に異変が起きています。
就航したばかりの徳島では、来月から減便に。仙台や福岡、札幌便などでも。香港からの旅行需要が減っているというのです。
インバウンドは好調なはずでは…。取材してみると、科学的根拠のない“災害のうわさ”が影響していることが見えてきました。
何が起きているのか。
世界の経済情勢が不透明さを増していることもありますが、実は香港で「2025年7月5日に日本で大災難が起きる」という“うわさ”が広がっているのです。
“うわさ”のきっかけとなったのは日本のマンガです。
「日本が大津波に襲われる夢を見た」などという内容で、YouTubeでインフルエンサーなどが取り上げ、香港でも広がっています。
この“うわさ”、科学的根拠はありません。気象庁は「現在の科学的知見では時期や場所、規模を特定した地震や噴火の予知はできません」としています。
参照記事:NHK「「7月5日」根拠なき“予言”が拡散 災害や地震 隕石説まで 南海トラフ想定が影響? 何が起きているのか」2025年4月26日
今回のニュースから、単なるうわさでも人々の行動に大きな影響を与えることが見て取れます。
7月は訪日香港客のハイシーズンであり、日本にとっても経済的な打撃は避けられないでしょう。
なぜ人々はうわさに翻弄され、思いもよらぬ行動に出てしまうのでしょうか。
ここでは、香港のニュースを例に、うわさに惑わされる人々の心理を解説します。
人は、同じ情報を繰り返し見聞きすると、正誤に関係なく、その内容を真実だと感じてしまいます。
これが、「真実性の錯誤効果」という心理現象です。
繰り返し見聞きした回数が多いほど、真実だと思い込みやすくなります。
初めて聞いた正しい情報と、繰り返された嘘の情報なら、後者のほうが信憑性が高いと判断するのが人間の心理です。
香港では、7月に日本で大災害が起きるというニュースが、メディアやインターネットで日常的に発信されています。
最初は気にしていなかった人も、うわさを頻繁に耳にするうちに、徐々に真実だと思い込んでしまった可能性は高いでしょう。
他者の感情が、周囲の人へ移っていく現象を「情動感染」と言います。
これは人間だけでなく犬やマウスにも見られる現象で、最も原始的な共感性だと考えられています。
情動感染では、ポジティブな感情よりも、ネガティブな感情のほうが伝染しやすいという特徴があります。
つまり、不安や恐怖、ストレスといった感情は、周囲の人へ影響を与える可能性が高く、より速いスピードで拡散されていくのです。
香港は災害の少ない地域なので、「大災害が起きる」という予言を聞き、日本への渡航に不安を感じた人々は多いと推測できます。
さらに「周りの人と同じことを信じていると安心」という集団心理も相まって、一斉に訪日を控える動きが広まったと考えられます。
うわさは、私たちの生活でも日常的に繰り広げられています。
自分の身の周りでも、今回のニュースの縮図版が展開される可能性は大いにあります。
悪いうわさは一度流れると、人間の心理によって瞬く間に拡散されます。
もし職場で、「〇〇さんと不倫をしている」「横領したらしい」といった事実無根のうわさを立てられたら、会社での立場を失いかねません。
子どものいじめやママ友コミュニティの嫌がらせも同様で、意図的に悪いうわさが流されている可能性もあります。
本人の損害につながるようなうわさは、正当な方法で辞めさせるべきです。
悪質なうわさや風評被害は法的措置の対象となり、名誉棄損、業務妨害、侮辱罪に該当するケースもあります。
ただし、うわさは証拠が掴みにくく、正当性を証明しにくい点に注意が必要です。
近年はSNSの普及により、加害者の特定も難しくなっています。
探偵事務所では、うわさに関する証拠収集や加害者の特定も行なっています。自分だけで対処しようとせず、プロの探偵の力を借りて、自分や家族の名誉を守りましょう。
噂やデマが飛び交うこの現代社会においては、私たち一人ひとりが探偵のような分析力を身につけることが重要です。
新たな情報を受け取る際は、「この情報源は信頼できるか」「複数の情報源から確認できるか」「感情に訴えかける要素はないか」「証拠は具体的で検証可能か」といった観点から、常に批判的に検討するクセをつけましょう。
事実は一つ、解釈は無数ということが、この社会では往々にしてあるからです。
事実と解釈を混同せず、常に冷静な目で情報と向き合うことが、噂に惑わされない最大の防御策となるでしょう。
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監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。 得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。 監修者・執筆者一覧へ
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