
2025年の4月、東京都豊島区で監禁致傷事件が明らかになりました。
被害者の男性は重症を負っていたにも関わらず、「悪いのは自分だ」とする証言を繰り返していたことで話題になりました。
このような被害者が加害者を庇う現象を「ストックホルム症候群」といいます。
名前は知っているものの、実態はわからない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、ストックホルム症候群とは何かを詳しく解説します。
発症する原因なども紹介していますので、ストックホルム症候群への理解を深めたい場合はお役立てください。
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2025年4月。東京・豊島区の十字路で、タクシーと乗用車の衝突事故が発生。
この事故がきっかけで、監禁致傷事件が明らかになった。
乗用車を運転していた、大城優斗容疑者、24歳。
男性を監禁・暴行し重傷を負わせたとして、逮捕された。
他にも6人が、同じ容疑で逮捕。警視庁によると、容疑者らは男性を約3か月間、監禁していたという。
(中略)
警視庁によると、男性は容疑者に、金づちで指をたたかれたり、熱湯をかけられたりするなど、継続的に暴行を加えられていたという。
しかし、男性が保護された直後、「悪いのは私なんです」と、数日の間、大城容疑者をかばうような証言を続けていたという。
引用元:Yahoo!ニュース 3か月“監禁”暴力と支配…男7人逮捕 被害男性“ストックホルム症候群”か【バンキシャ!】(2025年7月21日)

ストックホルム症候群は、誘拐や監禁などの被害者が加害者に共感や好意を抱く現象です。
極度のストレス状態の中、加害者に頼るしかない状況が続くと発症すると言われています。
被害者自身は「加害者に助けられた」「理解し合えた」と感じており、自覚がないケースが多いです。
今回の事件では、加害者グループが「悪い役」と「良い役」に分かれることで、精神を支配しやすい環境を意図的に作り上げたと見られています。
被害者が加害者を庇う原因は、認知の歪みです。
加害者に命の安否を委ねている状況下では、被害者はなんとかして自分の身を守ろうとします。
その結果、矛盾した認知を作り出して犯人を肯定しようとするのです。
被害者が好意的な態度を見せれば、加害者も無闇に危害を加えないと考えるからでしょう。
また、加害者から離れがたくなる心理には「外傷的絆」も影響しています。
外傷的絆とは、虐待やトラウマ体験などが原因で形成される不健全な絆のことです。
「良い扱い」と「悪い扱い」が繰り返されることで強化され、その過程で被害者の正当な判断力を奪います。
正当な判断ができなくなるだけでなく、主体性や自立性も失ってしまうため、相手から離れることに恐怖を抱いてしまうのです。

ストックホルム症候群は、監禁や虐待などの事件が原因で陥るものと思われがちです。
しかし実際は、日常生活でもストックホルム症候群に陥る可能性があります。
とくに、下記の3つの条件が揃った環境では発症しやすいため、注意が必要です。
この章では、ストックホルム症候群に陥りやすい環境とその理由を解説していきます。
また、下記の環境以外でもストックホルム症候群の兆候が見られる場合があります。
おかしいと感じた場合は専門医に相談し、適切なサポートを受けましょう。
最初に紹介するのは、家庭でストックホルム症候群に陥るケースです。
親から子どもへの虐待やパートナーへのDVなど、さまざまな原因があげられます。
家庭内の場合、被害者は経済的・居住的な逃げ場がない場合がほとんどです。
加害者との共存を正当化せざるを得なくなり、「でも本当は優しい」「相手なりに自分を思っている」という思考に陥ります。
2つ目は、学校が原因になるケースです。
学校は閉鎖的かつ同調圧力が強い環境なため、いじめや体罰などが黙認されやすい傾向があります。
黙認され続けると、被害者の感覚が麻痺してしまい、度を超えた暴力も「これは普通だ」と誤認してしまうのです。
このような状況が長期間続くと、辛い環境から逃げることにすら、被害者が罪悪感を抱くケースもあります。
3つ目は、会社が原因でストックホルム症候群に陥るケースです。
長時間労働や理不尽な指示、パワハラなどが長期間続いている環境下で多く見られます。
辛い状況でも「これは期待されている証拠だ」「ここを乗り切れば必ず成長できる」などと捉えて、無理をしてしまいます。
職場での苦しさを抱え込んでしまった結果、精神疾患を発症する場合も珍しくありません。
おかしいと感じた場合は無理をせず、休職や退職などの行動をとりましょう。
最後のケースは宗教団体です。
宗教団体の中には、高額なお布施や貢物を要求してくる団体があります。
しかしいくら高額でも、本人が「自分のためだ」「これは試練なんだ」と捉えており、搾取されていることにすら気付いていない場合もあります。
忠告してくる周囲の人間を煩わしく感じているケースも少なくありません。

上記では、ストックホルム症候群になりやすい状況について解説してきました。
しかし、先ほどのような状況に陥った人が全員、加害者を庇ってしまうわけではありません。
この章では、ストックホルム症候群になりやすい人の特徴とその理由を詳しく解説します 。
ストックホルム症候群になりやすい人の特徴として、自尊心が低い点があげられます。
自分の価値を低く見積もりがちな人は、他人からの攻撃や悪意も「仕方ない」と受け入れてしまいます。
加害者に危害を加えられても、自分に原因があると考え、訴えるどころか庇ってしまう傾向があるのです。
共感力の高さも、ストックホルム症候群の原因になることがあります。
共感力が高い人は、他人の感情や背景を深く理解しようとします。
それがエスカレートすると、加害者からの暴力や支配にも理解を示そうとしてしまうのです。
その結果、「この人は本当は優しい」「私にしかこの人を理解できない」などの思考に陥ります。
放置してしまうと、強いストレスに晒されているにも関わらず、加害者に執着する事態に発展してしまうでしょう。
依存傾向が強い人も注意が必要です。
誰かに依存しやすい人は、加害者との関係を断つことに強い不安を抱きます。
離れた方が良いとわかっていても、見捨てられる恐怖から関係を断ち切れず、被害を受け続けるケースはここに該当します。

ここまでの記事を読んで、自分もストックホルム症候群ではないかと不安になった方もいるのではないでしょうか?
しかし、ストックホルム症候群かを1人で判断するのは難しいです。
そこでこの章では、ストックホルム症候群が疑われる際の対処法について解説します。
ストックホルム症候群の疑いがある人との関わり方も紹介していますので、参考にしてください。
「自分はストックホルム症候群ではないか?」と感じた時は、まず自分の状況を冷静に見つめ直しましょう。
下記の3点を確認し、一致している項目が多い場合は、ストックホルム症候群の可能性が高いと言えます。
自身で判断するのが難しい、全て当てはまるけどストックホルム症候群ではないと思う場合もあるでしょう。
その際は友人などの第三者に相談してみてください。
自分の思い込みを抜きにした、客観的な判断が期待できます。
ストックホルム症候群は自覚しにくいからこそ、第三者からの意見がとても重要になります。
ストックホルム症候群は自力での回復が困難です。
しんどさを感じる場合は、下記の専門機関への相談・受診も視野に入れましょう。
これらを通じて、自分の気持ちや加害者に共感してしまう心理を知れば、しんどさも軽減されるはずです。
1人で悩まず、自分の気持ちを素直に話してみましょう。
また、今後も自分が被害にあう可能性が高い場合は、安全な環境に身をおく準備も進めてください。
逃げることは弱いことではありません。
精神の回復に必要なため、加害者と距離をおくことも視野に入れてみてください。
ストックホルム症候群の人が身の回りにいる場合は、思いやりのある態度で接しましょう。
相手は既に被害で苦しんでいる可能性があります。
離れられない感情を否定したり、加害者との関係を切ることを強要したりするのは絶対にNGです。
本人が望んでいないのに強引に介入すると、かえって逆効果になる場合もあります。
まずは信頼関係を築き、「ここはコントロールされない場所だ」と認識してもらうことが大切です。
相手の感情に共感したり、安心感を与える言葉をかけたりすると、信頼してもらいやすくなるでしょう。

今回の事件では、加害者グループが被害者を意図的に精神的に支配し、ストックホルム症候群に陥れました。
このような状況をわざと作り上げ、被害者を精神的に追い詰めた点は非難されるべきです。
また、ストックホルム症候群は、相手を守ることで自分を守っている状態でもあります。
加害者に好意や同情の念を抱いたとしても、自分が大きなストレスを受けている事実を忘れないでください。
探偵であれば、自分がストックホルム症候群なのかを客観的な視点から判断できます。
1人で抱え込まず、まずはご相談ください。
※docomo・au・softbankなどの携帯電話アドレスはドメイン指定設定により毎月10件以上の「送信エラー」が起こっているため、 フリーメール(GmailやYahoo!mail)の利用をおすすめします。しばらく経っても返信が来ない方はお電話にてご確認くださいませ。

監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。 得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。 監修者・執筆者一覧へ
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