
「友人から急にビジネスの話を持ちかけられた」「儲かるからと高額な商品を勧められた」など、マルチ商法をめぐる相談は2024年時点で年間4,117件と依然多い状況が続いています。
マルチ商法は表向き、合法的なネットワークビジネスで参加者すべてが稼げると説明されることが多いです。
しかし、実際には上位の一部だけが利益を得て、多くの参加者が損失を抱える構造になっているケースがほとんどになります。
勧誘時には過度な成功体験や魅力的な報酬プランが強調されるため、仕組みを知らないまま契約してしまう人も少なくありません。
なかには、詐欺まがいの手口や問題のある商材が使われる例もあり、金銭トラブルや人間関係の悪化につながるリスクもあります。
そこで本記事では、マルチ商法の基本的な仕組みから具体的な事例、危険性や対処法までわかりやすく解説します。
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マルチ商法とは、勧誘と商品販売を組み合わせて報酬を得る仕組みを持つビジネス形態の総称です。
ここでは、その基本的な構造や、混同されやすいねずみ講との違いについて解説します。
マルチ商法は、会員が友人や知人を新たな会員として勧誘し、組織をピラミッド状に広げながら商品を販売していく構造になっています。
参加者は加入時に高額な商品購入や保証金を支払い、その後は勧誘した人数や下位会員の売上に応じて紹介料を受け取ります。
人を紹介すればするほど利益が増える構造のため、強引な勧誘や詐欺的な手法が横行しやすいです。
事実、マルチ商法は特定商取引法における「連鎖販売取引」に該当し、書面交付義務や誇大広告の禁止など厳格な規制が設けられています。
なお、ネットワークビジネスやシステム販売と呼ばれる場合もありますが、基本的な構造は同じです。
ねずみ講は商品やサービスの販売を一切行なわず、後から参加した人の拠出金を上位の会員に配分するだけの仕組みで、無限連鎖防止法により全面禁止されています。
これに対してマルチ商法は、商品やサービスの売買を前提とするため形式上は合法とされています。
しかし、収益の仕組みが勧誘に大きく依存している場合は、実態としてねずみ講に近い構造になるため注意が必要です。
また、商品の説明を装いながら加入を促すケースなど、勧誘方法に問題があると特定商取引法の規制対象となります。
両者の違いを理解しておくことで、違法なねずみ講と、形式上合法でもトラブルの多いマルチ商法とを見分けやすくなります。


マルチ商法は、はじめに参加者が保証金の支払いや高額な商品の購入を行ない、その在庫を友人や知人に販売することで報酬を得る仕組みです。
さらに、商品を購入した友人を新たな会員として入会させると追加の報酬が発生し、勧誘した人数が増えるほど収入が大きくなるよう設計されています。
また、自分が直接勧誘した相手だけでなく、その下位に続く会員の売上も報酬に反映されるため、組織を広げるほど権利収入が得られるとうたわれることが多いです。
しかし、実際には商品販売よりも勧誘による収入に依存しており、新規会員の増加が止まった段階でほとんどの参加者が利益を得られなくなります。
その結果、売れない在庫や支払いだけが残るケースが多く、構造そのものが不安定な収益モデルである点に注意が必要です。

マルチ商法では、参加者の不安や欲求につけ込む形で勧誘を行なうケースが多く、最初は魅力的な成功談や利益モデルを示して近づいてくるのが特徴です。
次のような手口が典型的で、いずれも加入を急がせ、冷静な判断をさせなくさせるための働きかけを行います。
これらの手口に使われる商材は、健康食品や化粧品のような定番商品から、情報商材・仮想通貨・オンライン投資サービスなど、時代に応じて形を変えています。
とくに投資やビジネス手法など実体の乏しい商材ほど金額が高く、大きな被害になりやすい点に注意が必要です。

マルチ商法をめぐっては、虚偽説明や不当な勧誘によって行政処分や刑事事件に発展したケースが少なくありません。
ここでは、実際に問題となった企業の事例を取り上げ、仕組みの危険性をより具体的に確認していきます。
石川県の化粧品メーカー「I・TEC International」は、2020年度には約140億円もの売上を計上していました。
しかし、同社は「新規顧客を獲得すれば報酬が得られる」と説明して、会員の勧誘を中心に組織を拡大する典型的なマルチ商法スキームを展開していたことが発覚しています。
その結果、虚偽や誇大な内容を含む勧誘が横行していたとされ、行政から6か月間の業務停止命令を受けました。
会員間の金銭トラブルや在庫を抱える被害も生じ、消費者センターへの相談件数が増加したことも問題視されています。
化粧品や健康食品を扱う「株式会社SEED」は、勧誘時の不十分な説明や誇大な広告表示が問題視され、特定商取引法違反として18か月間の営業停止命令を受けました。
同社は会員に対し「簡単に収入を得られる」といった過度な期待を抱かせる勧誘を行なっていたとされ、消費者が正確な判断をしにくい状況を生み出していた点が指摘されています。
また、加入時に高額な商品購入を求めるなど不適切な契約手法も確認され、消費者庁は継続的な被害が広がるおそれがあるとして厳しい措置を講じました。
SEED社の処分は、マルチ商法における誇大勧誘や不当勧誘が重大な行政処分につながる典型例のひとつです。

マルチ商法は、仕組みを十分に理解しないまま参加すると金銭面・人間関係・法的リスクなど多方面で深刻なトラブルを招く可能性があります。
ここでは、実際に多くの人が直面しやすい代表的な被害内容を具体的に解説します。
マルチ商法では、加入時に高額な商品購入や保証金を求められ、クレジット払いやローンを組んで契約してしまう事例が多いです。
ところが実際には勧誘がうまくいかず、購入した商品も思うように売れないため、返済だけが残るケースが目立ちます。
また、組織の上位者から「すぐ元が取れる」「買い増しすれば収益が増える」といった甘い言葉を受け、追加で商品を購入してさらに負債が膨らむこともあります。
こうした金銭的被害は一度始まると長期化しやすく、早期の相談や対処が重要です。
マルチ商法では、収入を得るために家族や友人を勧誘する必要があり、断られた相手との関係がぎくしゃくしやすいです。
とくに勧誘を重ねるうちに、相手から「都合よく利用されている」と感じられて距離を置かれることも少なくありません。
また、組織内の上位者から「もっと声をかけるべき」「本気になれば稼げる」などと圧力を受け、周囲の人にしつこく勧誘してしまう状況に追い込まれるケースもあります。
その結果、信頼していた友人関係が崩れたり、家族間で口論や不信感が生じたりと、精神的なストレスが大きくなる傾向があります。
一度壊れた人間関係は元に戻りにくく、金銭被害以上のダメージとなることもあるでしょう。
マルチ商法に参加すると、知らないうちに自分自身が他人を勧誘し、結果的に加害者側に立ってしまう危険があります。
とくに上位会員から提供されるセールストークをそのまま使って勧誘した場合、虚偽の説明や誇大な表現が詐欺行為に該当することもあるため、注意が必要です。
また、契約内容やリスクを十分に説明しないまま友人や知人を誘うことで、相手に金銭的被害を与えてしまうこともあります。
被害者を増やすことで自分の報酬が発生する仕組みのため、意図せず違法性の高い行為に巻き込まれるケースも珍しくありません。
こうしたトラブルは後から責任問題に発展することがあるため、軽い気持ちで参加すると大きなリスクを背負う可能性があります。

マルチ商法の勧誘は強引に続けられることもあり、適切な対処を知らないと断り切れず契約してしまうおそれがあります。
ここでは、勧誘を受けた際に取るべき具体的な断り方をわかりやすく解説します。
マルチ商法の勧誘に対しては、あいまいな返答をすると相手に「可能性がある」と判断され、さらに強く勧められることが多くあります。
そのため、「興味がない」「投資やビジネスには関わらない」といった明確な意思表示を最初に伝えることが重要です。
相手が親しい友人であっても、情に流されずに話を遮る勇気を持つことで、不要なトラブルを避けられます。
また、契約内容を確認する前にその場で判断を迫られた際は、「即決はしない」と毅然とした姿勢を示すことが効果的です。
はっきりと断ることで、相手にこれ以上の勧誘は無意味だと伝わり、早い段階でトラブルを避けられます。
マルチ商法の勧誘を受けた際は、相手の勢いに流されず、事実関係を丁寧に確認することが大切です。
業者名や代表者名、契約内容、報酬体系などを聞き取り、メモを残しておくことで、後から第三者に相談しやすくなります。
また、聞き慣れない商材や過度に利益を強調する説明があれば、誇大広告の可能性があるため、一度立ち止まって検討すべきです。
とくに消費生活センターなどの公的機関は、中立的な立場からリスクの有無を判断してくれるため、早めの相談が有効です。
マルチ商法の勧誘があまりにも執拗で、断っても何度も連絡が来る場合は、迷わず警察へ相談することが重要です。
とくに長時間にわたり帰宅できない状況に置かれたり、断りにくい雰囲気をつくられて自由に行動できなくなったりする場合は、威迫行為や監禁にあたる可能性があります。
また、自宅や職場に繰り返し押しかけられるなどの行動によって、恐怖や不安を感じた時点で早めの相談が有効です。
警察は状況に応じて介入や指導を行ない、必要であれば記録の残る相談受理も行なってくれるため、後のトラブル対処にも役立ちます。
無理に一人で抱え込まず、公的機関の力を借りることが身を守る第一歩です。

マルチ商法に契約してしまっても、法律に基づいて契約を取り消したり解約したりできる制度がいくつか用意されています。
ここでは、状況に応じて利用できる主な救済手段をわかりやすく紹介します。
マルチ商法による取引は、クーリングオフ制度によって契約解除が可能です。
クーリングオフとは、契約書を受け取った日または商品を受け取った日から20日以内であれば無条件で契約を解除できる制度です。
手続きは書面やメールなど記録が残る方法で通知すればよく、理由を説明する必要もありません。
また、販売者が契約書面を適切に交付していなかった場合は、20日を過ぎてもクーリングオフが認められることがあります。
通知後は商品の返送や返金手続きが進むため、できるだけ早く行動することが重要です。
被害が深刻になる前にクーリングオフを使うことで、金銭トラブルを最小限に抑えられます。
マルチ商法の勧誘で、重要な情報をわざと隠されたり、事実と異なる説明を受けたりした場合は、消費者契約法に基づいて契約を取り消せます。
例えば、「必ず儲かる」「誰でも成果が出る」といった誤解を招く説明や、不安をあおって判断力を奪うような勧誘は取り消しの対象です。
また、相手が急かすことで冷静な判断ができなくなった場合も、無効を主張できます。
取り消しが認められれば契約は初めからなかったものと扱われ、支払った代金の返金を求めることも可能です。
マルチ商法の連鎖販売取引では、加入から1年以内であれば、中途解約制度を利用して契約を終了できます。
商品を受け取ってから90日以内で、かつ未使用であることが条件となりますが、これらを満たしていれば未開封の商品を返品し、支払い代金の返金が可能です。
また、この制度には違約金の上限も定められており、過大な請求をされる心配はありません。
クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合でも利用できるため、被害を抑えるための重要な手段となります。
返金手続きは証拠の提出が必要になることもあり、契約書や商品購入記録は必ず保管しておきましょう。
マルチ商法に巻き込まれてしまい、自力で状況を整理できない場合は、探偵などの専門機関に相談することも有効です。
探偵は勧誘の実態や組織の運営方法を調査できるため、詐欺や違法勧誘の有無を客観的な証拠として把握できます。
また、契約書の内容だけでは判断できないケースでも、潜入調査や聞き取り調査を通して実態を明らかにすることが可能です。
得られた情報は、弁護士や警察へ相談する際の重要な資料となり、法的措置を取るうえで大きく役立ちます。
一人で問題を抱え込まず、専門家の力を借りることで被害拡大を防ぎながら、適切な解決へと進めます。

マルチ商法は一見すると魅力的な収入モデルに見えることがありますが、実際には多くのリスクを伴うビジネス形態です。
仕組みを正しく理解していないと、借金や人間関係の悪化など深刻なトラブルに巻き込まれる可能性が高まります。
勧誘を受けた際は、その場の勢いや甘い言葉に流されず、冷静に情報を集めて判断する姿勢が欠かせません。
また、すでに契約してしまった場合でも、クーリングオフや契約取消しなど利用できる制度は複数あります。
適切な対応を知っておくことで、被害を最小限に抑え、安全な問題解決が可能です。
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監修者・執筆者 / 山内
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。 得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。 監修者・執筆者一覧へ
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