1997年、大人気ロックバンド「X JAPAN」が突如解散を発表しました。
その裏にはボーカリストのTOSHIさん(現:Toshl)の宗教への洗脳問題がありました。
バンド脱退後、Toshlさんは所属する宗教団体のイベントに参加するなど、広告塔として活動していました。
しかし、2008年のX JAPAN再結成を機に洗脳から脱する契機が生まれ、2010年にToshlさんが脱会を発表する記者会見を行ないました。
そして2014年に出版されたToshlさんの著書では、洗脳下における壮絶な生活や宗教団体の実態が語られています。
なぜToshlさんは宗教に洗脳され、どのようにして洗脳を脱することができたのでしょうか。
有名人でも陥ってしまう洗脳の魔の手と、洗脳を解くためのコツを探偵目線で解説します。
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Toshlさんの所属するX JAPANは大ヒット曲を連発し、まさに輝かしい日々の中にある状況でした。
しかし、それでも少し生まれた隙から、洗脳の魔の手は忍び寄っていきます。
Toshlさんが洗脳されることになった経緯を見ていきましょう。
Toshlさんは個人事務所を立ち上げる際に、実兄にその社長就任を依頼しました。
実兄は元々レコード会社や芸能事務所に勤務していたこともあり、芸能関係の仕事に精通していたためです。
ですが、Toshlさんのラジオ番組への出演を契機に、元々芸能人になりたかった意欲が再燃して社長業がおろそかになってしまうことに。
これにはX JAPANメンバーからも苦情が出るようになり、実兄を社長から解任することとなりました。
加えて、母も幼馴染であるToshlさんとバンドリーダーYOSHIKIさんの幼少期の写真をファンに見せたり、実家に入れることでお金を得ていたことが発覚。
X JAPAN関係者に謝罪して回るハメとなり、肉親が自らの利益のために自分を利用していたと知ったToshlさんは人間不信に陥りました。
Toshlさんが洗脳にハマる一因となったのが、音楽活動におけるプレッシャーでした。
元々「X」だったバンド名は、世界進出を意識して1992年に「X JAPAN」に改名。
世界進出への動きが本格化する中で、リーダーYOSHIKIさんがToshlさんの歌に求めるハードルはどんどん上昇していきました。
音程やリズムの正確さはもちろんの事、世界進出のために英語の発音も細部までチェック。
1曲完成させるのに、数ヶ月というとんでもない長期間に及んでいたのです。
YOSHIKIさんの要求に応えられないと感じたToshlさんは、どんどん自信を喪失していきました。
気付けば「自分はバンドに必要とされていない」という自己嫌悪に陥ることに。
こうした自信の喪失も、洗脳される隙になってしまった面もあります。
人間関係や音楽活動の行き詰まりで、精神が疲れ切ってしまったToshlさん。
そんな中で、結婚することになる守谷香さんと出会います。
この時期の守谷さんと過ごした時間を、Toshlさんは後年のインタビューでこう振り返っています。
心が病んでいるときや不安なときや傷ついているときって、自分の弱さもあるんですが、やっぱり何もかも信じられないって気持ちになる。そんなときに、彼女はこれまでの人とは違う優しげなアプローチで現れたんですね。それで心の拠り所になってしまったんです。
周囲の人が信頼できなくなったToshlさんにとって、守谷さんは自分を受け入れてくれる存在に写ったそうです。
しかし、その守谷さんの手によって、Toshlさんは洗脳の術中にハマってしまいます。
さまざまな迷いを抱えたToshlさんは、守谷さんにヒーリングアーティストを名乗る男性のセミナーに誘われます。
このセミナー受講によって、Toshlさんは洗脳の影響を強く受けることになっていったのです。
セミナー参加後はだんだんライブ中に話す内容も様子が変わり、YOSHIKIさんの指示でToshlさんのマイクはいつでもオフにされる状態になっていました。
1997年にToshlさんと守谷さんは結婚し、そのままX JAPANは解散へと進んでいきました。
宗教団体に参加したToshlさんは、どのような手法で洗脳を受けたのでしょうか。
はたから聞くと荒唐無稽な内容に思えるかもしれませんが、状況が出来上がると突飛な行動でも正しく見えてしまうのです。
Toshlさんを洗脳した宗教団体が使った手口をご紹介していきます。
この宗教団体の特徴的な手法に「フィードバック」というものがあります。
開催されるセミナーの中では、自分の生い立ちを語ることで心の傷をさらけ出す「シェアー」を行ないます。
その内容に対して、他のセミナー受講生が感想や意見を述べることがフィードバックです。
フィードバックの内容はただの感想ではなく、罵倒するような否定的な内容となっています。
Toshlさんの場合は幼少期の出来事を「化け物アゴ男」「宇宙的犯罪者」という蔑称とともに否定され続けました。
また、セミナー中だけでなく電話やメールでも罵倒が行なわれていたようです。
バッシングに近い言葉を浴びせられる数日間のセミナーの終盤では、感動的な体験を共有することでマインドコントロールを行ないます。
後に宗教団体を相手取った裁判の中で、セミナーには「マネートレーニング」という内容もあったと明らかになりました。
宗教団体首謀者の男性が、受講生に対して「お金を借りるのがいけないのは間違った観念だからどんどん借りた方が良い」と発言して借金を奨励。
そして深夜の2時3時に至るまで、受講者の金銭感覚を罵倒するセミナーを行ないます。
これは後々献金を集める際に、お金を出すことに対する心理的なブレーキを取り払う目的があるとも言われています。
借金をしてでも献金をさせようとする、宗教団体側の思惑が透けて見えるようです。
Toshlさんも宗教団体におよそ10億円に及ぶ大金を渡したと発言しています。
2004年に、児童相談所が栃木県那須町の宗教団体施設から児童5人を保護しました。
子どもはいずれも入信者の子どもであり、大人がセミナーに勤しむ傍らで段ボールに入れられて放置されていたとのことです。
大人がセミナーで怒鳴り合い、時に泣き叫ぶ中で子どもが段ボールに入れられる様子は、まったくもって普通のことではありません。
中には一緒にセミナーを受ける子どもも確認され、当時16歳だった少女はその後も宗教団体に身を置いたといいます。
宗教団体側が子どものことなど何も考えていないのがよくわかる事例です。
洗脳の影響は根深く、簡単に切り離すことはできません。
外部からの働きかけも難しいですが、脱出する方法は存在します。
Toshlさんも2010年に宗教団体を脱会し、X JAPANに復活を果たしました。
洗脳から脱出する方法を紹介します。
Toshlさんが洗脳から脱するきっかけとなったのは、2008年のX JAPANの一時的な再結成でした。
当時ToshlさんはX JAPANについて「世界中の若者をダメにした張本人」と洗脳されていたため、再結成の提案も断る気でいました。
しかし、宗教団体の首謀者である男性は高額ギャラに目がくらみ、再結成に応じるように伝えました。
これまでの教えと矛盾する指示に対して、Toshlさんの中で宗教団体側への疑念が生じることに。
それでも宗教団体に所属したまま2008年の再結成公演を行ない、この時話す内容はすべて団体側に指示されていたといいます。
また、再結成に伴うYOSHIKIさんをはじめとしたさまざまな人との共同作業を通して、次第に正常な感覚を取り戻していきました。
決定的になったのは、妻の守谷さんと首謀者の男性が肉体関係にあると気付いたことです。
これによりToshlさんは宗教団体から抜け出すことを決意し、2010年に洗脳されていたことと宗教団体の異常な状況を記者会見で告発しました。
Toshlさんの場合、自ら洗脳されていると気付き、自らの意思で宗教と決別したことで洗脳から脱しました。
この「自分で洗脳されていると気付く」ことが、洗脳解消に最も重要と言われています。
もし周囲が洗脳に気付いて、力づくで洗脳する側と距離を置かせても、執着心が強まって逆効果です。
洗脳の被害者に対して周囲ができることは、「自分が洗脳されている」と気付かせるためのアプローチです。
そもそもなぜ洗脳されるのかと言えば、心のよりどころとなる人・物がいないことで生まれる孤独感を埋めようとするため。
つまり、周囲がちゃんと働きかけて一人じゃないことを伝えてあげることが重要です。
もし洗脳されている人と人間関係でわだかまりがあるのなら、自分から思い当たる点について謝ったりしましょう。
また、コミュニケーションについてもあくまで話を聞こうとする姿勢を見せて、相手を受け入れてあげることが大事です。
他にも、洗脳されていると気付かせるために「質問」することもいいでしょう。
もし洗脳される際に聞かされた教えが明らかなら、その教えの矛盾点や論理的ほころびを突くような質問をします。
そうすることで、洗脳の教えに対する疑問を抱かせるのです。
この教えに対する疑いが、洗脳に気付くために重要になります。
そして「いつでも帰っておいで」など迎え入れる姿勢を見せてあげれば、洗脳から抜け出す一歩を踏み出せるでしょう。
洗脳の解除は非常に複雑で困難なプロセスであり、専門的な知識と技術が必要です。
洗脳された人々は、感情、信念、行動などが深く操られていることが一般的で、簡単な解決策が存在するわけではありません。
ただし、今回Toshlさんの洗脳解除事例をみればわかるとおり「洗脳者の裏の顔」、偽の現実や虚偽の信念を暴露することで疑いが生じ、目を覚ますことができました。
そのほか、再結成に伴うYOSHIKIさんの支援があって解除することができたといえます。
探偵ができることは、「現実と向き合う」きっかけを与えることです。
洗脳された信念や価値観と現実とを緩やかに対比させ、認識のギャップを埋めるプロセスが必ず必要になります。
専門家洗脳トラブルサポートは実態調査、聞き込み調査、身辺調査、潜入調査等を行ない、洗脳解除に必要な情報や証拠の収集を行ないます。
しかし、これだけで洗脳が解除されるわけではありません。
洗脳被害に遭っているご家族から、「説得をお願いしたい」「話し合いの場に立ち会ってほしい」といったサポートのご相談を多くいただいております。
先程も述べましたが、現実と向き合い(理想と現実のギャップを見つけること)が、洗脳を解く鍵となります。
答えを押し付けるのではなく、本人に「疑問」を抱かせ、自ら考えるよう促すことが重要です。
そこには、家族や親友のサポートがあっての洗脳解除であり、探偵と支援者の「二人三脚」で成し遂げることが条件となります。
専門のカウンセラーが家族にアドバイスすることができるので、もし家族や親友が「洗脳されているかも」と気が付いたら、早期相談をおすすめします。
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監修者・執筆者 / 山内 / 2024年8月30日更新
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ
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