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公開日: 2024/09/16
セキュリティコラム
 公開日: 2024/09/16

尼崎事件とは?事件の全容や洗脳手法を探偵目線で解説

この記事の読了目安時間は約 3 分です。

「尼崎事件」という事件をご存じでしょうか。

1987年から2012年にいたるまで、実に25年の長きに渡って複数の家庭を洗脳・支配した、犯罪史上でも例を見ないほどの凶悪事件です。

加害者・被害者の関係性が非常に入り組んでいるため、事件の全容がなかなか掴みにくいのが特徴といえます。

しかし、中心になるのは主犯女性による暴力と恐怖を伴う洗脳です。

この洗脳はどのようにして行なわれたのでしょうか。

尼崎事件の全容と、主犯女性の行なった洗脳手法について探偵目線で解説します。

尼崎事件とは

座り込む人に殴りかかろうとする人

尼崎事件は25年もの長期間続いた洗脳事件です。

この25年の間に、一体どんなことが行なわれてきたのでしょうか。

事件の概要・被害内容をまとめて紹介します。

主犯の存在

一連の事件に関与し、主犯と見られるのが角田美代子という女性でした。

主に共謀していたのが戸籍上の妹である角田三枝子容疑者、戸籍上のいとこである角田正則(本名:李正則)容疑者です。

美代子氏の指示を受けた正則容疑者が動き、ターゲットに脅迫や暴行を行ない、洗脳・支配をしかけます。

三枝子容疑者も、美代子氏の狙いが果たせるように動いていきました。

結果として、実に40人近くにわたる人間が関係する事件の構図が生まれました。

尼崎事件の概要

尼崎事件相関図

尼崎事件の構造はとても複雑になっていて、詳細の把握にも時間がかかります。

ここでは時系列順で、ターゲットにされた家庭にどのような洗脳・支配の魔の手が忍び寄っていったのかを紹介します。

1987年~1997年まで

事の発端は、1987年に後に三枝子容疑者が嫁ぐことで義母となるH家の女性が、暴行を受けて殺害されたことです。

この事件から、美代子氏らの関与が始まったと言われています。

遺体は尼崎の海に遺棄されましたが、2014年に始まった捜査でも結局発見はできませんでした。

また、その女性の娘も1997年に失踪しますが、詳細はわかっていません。

I家(1998年3月~2000年1月)

1998年に、美代子氏の母方の叔母の妻であるI家の女性の葬儀が行なわれます。

その際に参列した美代子氏が「葬儀の段取りが悪い」という難癖をつけて、I家親族を集めた家族会議を頻繁に行なわせました

裏に暴力団の存在を匂わせながら、美代子氏はI家の借金トラブルなどにも口出しし、影響力を強めていきます。

また、親族同士で不満を言い合いさせて、更には暴力・虐待も指示

まずは先の葬儀の故人である女性の妹に対して、その4人の息子たちに暴力・虐待を行なわせました。

その後息子たちに仕事を辞めさせて退職金を払わせたり、兵庫県西宮市のマンションで集団生活させるなどの指示を出しました。

虐待を受けた女性が1999年3月に死亡し、その長男が行方不明、長男の息子も転落死

警察も家族トラブルと処理して動かないため、耐えかねたI家の虐待死した女性の甥が美代子氏に窃盗計画を提案

それに乗った美代子氏は甥の自首により警察に逮捕され、I家は美代子氏の支配から解放されました。

しかし、美代子氏と養子縁組をした2人の子どもの内、角田健太郎容疑者だけは養子を継続しました。

M家・T家(2001年ごろ)

M家の長男は2001年ごろに美代子氏と知り合い、その後M家の長男・次男・角田正則容疑者は3人で美代子氏所有のマンションで共同生活を行なっていました。

2002年頃に長男は学校用務員の仕事を退職させられ、退職金を美代子氏に奪われました。

また、長男が美代子氏に借金があるということで、M家が金策に追われたとも言われています。

2003年2月、美代子氏がM家長女の嫁ぎ先である香川県高松市のT家に、正則容疑者を更生のために住まわせてほしいと依頼。

生活態度の悪い正則容疑者を預かれないと伝えたT家でしたが、美代子氏は身内10人ほどを引き連れてT家を訪れます

有無を言わせぬ状況を作った上で、正則容疑者の面倒を見れなかったことやM家長男の借金問題をダシに、T家にお金の工面を求めました。

ここでも、I家と同様に親族同士の言い争いや暴行を指示

特にT家の次女は美代子氏に心酔し、後に養子縁組をして角田瑠衣となります。

結局T家は美代子氏に約2000万円を支払ったと言われています。

暴行を受けたM家の母は2003年に死亡、T家の長男も2004年1月に死亡して、M家の次女も行方不明になりました。

その後も2005年にH家である三枝子容疑者の夫が沖縄で転落死、美代子氏と同居していた女性とT家の長女が2008年に暴行で死亡しています。

そして三枝子容疑者の夫の弟も東京に逃げていましたが、連れ戻されて2011年にコンクリート詰めにされて岡山の海に遺棄されました。

O家・K家(2009年4月~2011年11月)

2009年4月に角田瑠衣容疑者のベビーカーが電車のドアに挟まり、美代子氏が鉄道会社にクレームを入れました。

その際に対応したのが、K家の主人でした。

K家主人はクレーム解決のために美代子氏の家に何度も足を運びました。

その際に美代子氏はK家主人を脅したり、時に褒めるなどして徐々に洗脳・支配を進めていきます。

やがて美代子氏とK家は家族ぐるみの付き合いをするようになり、妻と2人の娘も交流を持つようになりました。

しかし、美代子氏はK家主人の「喫茶店を開きたい」という夢に漬け込み、主人に退職を迫ります。

2010年4月に主人は退職し、美代子氏はその後もK家への干渉を続けます。

結果としてK家夫婦は離婚し、元妻の実家であるO家の母も呼び寄せて同居させ、事あるごとに飲食の制限や親族同士の暴行を行なわせました。

そして元妻の姉までも同居し、親族同士で互いを監視しあう状況が生まれました。

O家の母は2011年9月11日に死亡し、K家主人と角田正則容疑者によってコンクリート詰めにされ貸し倉庫に放置されました。

その後は元妻の姉に暴力が集中し、耐えかねた姉は逃走し警察に通報。

事件の発覚を恐れた美代子氏と正則容疑者は、K家主人と元妻に自殺を強要したのです。

しかし間一髪の所で警察が駆けつけ、自殺の様子を見ていた美代子氏と正則容疑者を逮捕して事件が終結しました。

5つの家族から10人の犠牲者が出た

一連の事件では、実に10人もの犠牲者が出てしまいました。

  • H家女性(三枝子容疑者の義理の母)
  • I家女性
  • I家長男の息子
  • M家母
  • T家長男
  • 三枝子容疑者の夫(H家)
  • 美代子氏と同居していた女性
  • T家次女
  • 三枝子容疑者の夫の弟(H家)
  • O家母

行方不明になっている人物も含めたら、実際の数はもっと多くなるかもしれません。

25年にわたる洗脳・支配によって、5つの家庭が崩壊してしまったのです。

また、一連の事件に関係していたとして11人が逮捕されました。

  • 角田美代子氏
  • 角田正則容疑者(美代子氏の戸籍上のいとこ)
  • 角田三枝子容疑者(美代子氏の戸籍上の妹)
  • 角田瑠衣容疑者(美代子氏の義理の娘、T家次女)
  • 角田健太郎容疑者(美代子氏の義理の息子、I家四男の息子)
  • 角田優太郎容疑者(美代子氏の義理の息子、三枝子容疑者の息子?)
  • 東頼太郎容疑者(美代子氏の内縁の夫)
  • T家長女の夫
  • K家主人
  • K家元妻(O家次女)
  • K家元妻の姉(O家長女)

美代子氏の被害に遭った各家庭からも逮捕者が出てしまっています。

主犯の美代子氏は獄中自殺

事件の主犯である美代子氏は、2012年12月12日午前6時20分頃に兵庫県警本部の拘置所にて自殺を図りました

長袖シャツを首に巻きつけているところを発見されましたが、病院で死亡が確認されました。

一番の鍵を握る美代子氏が死亡したことで、この事件の真相解明は困難になったといえます。

なお、美代子氏の遺体を引き取りに来る親族はいなかったということです。

事件の裏にあった「洗脳」

小さい人形を糸で操る大きい人形

尼崎事件がここまでの被害を生んだ原因としては、やはり洗脳による支配が存在します。

美代子氏はどこで洗脳手法を学習し、それをどのように使用していったのでしょうか。

洗脳手法は父の影響

美代子氏が取っていた洗脳手法は、美代子氏の父親も同様の手口を行なっていたといわれています。

美代子氏の父親は、全国から集まる荒くれものを束ねるほどの人物。

荒くれものを家に住まわせ、圧倒的な圧力をかけて押さえつけて支配していました。

そんななかでも飴と鞭は欠かさず、食事と酒宴の場は用意していたようです。

過酷な環境においても喜びを与えることで、腕っぷしの強い人物たちをそばに置き続けていました。

このような手法を見続けてきた美代子氏は、人心掌握の手法を間近で学習してきたのです。

警察は「家族間トラブル」として対応

尼崎事件の発覚が遅れた理由としては、外から見れば事件が身内の揉め事と認識されやすかったことです。

事件中50件ほどあった警察への通報も、美代子氏の一度目の逮捕にいたった窃盗事件以外は家庭内トラブルとして対応されました。

被害者・加害者ともに家庭内の人間だったこともあり、より家庭内トラブルと扱われやすい側面もあったといえます。

主犯女性が行なった洗脳手法

鎖で縛られた腕

美代子氏はどのような手口で5つもの家族を崩壊させ、10人もの犠牲者を出したのでしょうか。

強面たちも支配した洗脳手法が、一般人に通用しないわけはありません。

美代子氏が行なっていた手口を解説していきます。

ターゲットの前で自分の権威を見せつける

徹底して行なっていたのは、自分の権威をターゲットにアピールすることです。

美代子氏がターゲットと話をする際には、まずターゲットの持つ夢などの身の上話を聞き出し、応援したり褒めるような言葉をかけます。

そこで自宅に招いた際に、同席させた強面の人物に自分に従っているような素振りを行なわせます

こうすることで「怖い人間を従わせる人物に自分は認められているから安心」という、洗脳における自らの権威性アピールを図ったのです。

権威性のアピールは詐欺師の常套手段ですが、これを美代子氏も体得していたといえます。

少しの関わりだけで一家全体に入り込む

美代子氏がターゲットを定めるきっかけは、本当に些細なことからです。

I家の場合は参列した葬儀の段取りが悪いこと、K家・O家は電車でのクレーム対応から。

いずれも日常の一場面に見えますが、共通点としては美代子氏が優位に立てる場面になっていることです。

関係性の始まりから美代子氏優位の構造なので、美代子氏の言い分が通りやすい状況だといえるでしょう。

そのままあれよあれよと家庭内の事情にまで入り込み、存在感を強めていきます。

主犯の女性が疑似家族を形成

被害を受けた家庭に共通しているのは、美代子氏の家および美代子氏の管理下にある場所に共同で住まわされた点です。

借り上げたマンションで共同生活させられたり(I家・O家・K家)、美代子氏自身が家に居座る(M家・T家)という2つのパターンが存在しました。

常に美代子氏の監視の目がある状況を作り出し、誰も逃げられないように心理誘導を行なったのです。

また、美代子氏と養子縁組させられる子どもや、強制的に結婚・離婚させられる夫婦も存在しました。

監禁・暴行のための「家族会議」

なかでも特徴的だったのが「家族会議」の存在です。

主にこの家族会議にて暴力が振るわれており、親族同士を憎しみ合わせることで美代子氏を打倒するために共謀する可能性をなくしました

また、家族内の誰かを共通の敵と指定し、暴力加害の対象にして美代子氏以外の人間に矛が向く仕組みを作りました。

途中で眠ることは許されず、心身ともに憔悴させる狙いもあったと伺えます。

裏にいるブレーン

上記の一連の洗脳手口ですが、父親の影響があるとはいえ一般人に過ぎない美代子氏が会得するには手が込みすぎているという見解もあります。

ジャーナリストの一橋文哉氏は、著書にて美代子氏の洗脳手口に影響を与えた人物がいると記しています。

その人物はカルト教団や新興宗教団体とつながりがあり、その人物から得た情報を自らの手口に反映させていたとのことです。

美代子氏は父親の洗脳手法と、この人物からの人心掌握術を組み合わせて、独自のマインドコントロール法を作り上げたといえます。

また、美代子氏は1996年から2002年にかけて起きた北九州監禁連続殺人事件についても熟知しており、尼崎事件はその発展形ともいえる事件です。

探偵ができる対策

虫眼鏡を覗く女性

尼崎事件は、犯罪史上でも他に例を見ないほどに凶悪な洗脳事件です。

深刻化してしまうと警察でも簡単に手は出せないため、犠牲が増えてしまう可能性も。

一体どのようにすれば、入念な洗脳への対策ができるのでしょうか。

ベストタイミングは「洗脳初期~中期」

尼崎事件の場合、主な手口は家族の内側に入り込んだ上で親族同士が争う状況を構築することです。

そのような状況にまで進行すると、抜け出すのはかなり難しくなってしまいます。

そのため、できるかぎり早い段階で違和感に気付き、洗脳の魔の手から逃れることが必要です。

家族の内情にまで口出ししようとする人が現れたら「ここまで話す必要があるか?」と一旦考えましょう。

完全に入り込まれる前なら、外部に相談することは十分可能です。

必要なのは違和感に気づくこと

探偵社などの調査会社に相談することで、まず置かれた現状が一般的なものかどうかを判断できます。

尼崎事件の場合だと、例えばクレーム対応で相手の自宅に何回も行き来することは普通ではありません。

自分や周囲の人間が置かれている状況に少しでも違和感を覚えた場合は、すぐ外部に相談すべきです。

探偵であれば、洗脳を行おうとしている人物の背後関係も調べ上げ、どのような素性を持っているのかを調査します。

調査で明らかにした事実によって、洗脳の解消を目指します

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    監修者・執筆者 / 山内

    1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ

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